日本経済新聞 2009年10月22日 「地の利を生かす」に掲載いただきました。

以下記事引用
東照宮や華厳の滝などの観光資源に恵まれ、多くの観光客が訪れる栃木県日光市。地元名産の「日光ゆば」を使った和菓子を製造・販売しているのが、さかえや(日光市、山本敏社長)だ。原料に県産大豆を使ったゆばを使うなど、地元食材にこだわった商品展開を心掛けている。
さかえやは1958年、山本社長の祖母が東武日光駅前で創業した。もともとは食堂や土産物の仕入れ販売を営んでいた。
80年代後半のピーク時に売上高は1億3000万円に達したが、バブル崩壊後は観光客の減少と連動し、経営も苦しくなっていった。
山本社長が入社した2001年。当時の売上高は6000万円程度にまで落ち込み、下げ止まりの兆しも見えない状況だった。
このままでは店がつぶれてしまうーー。その危機感から、それまで経営していた両親と話し合い「何か新しいことをやろう」と決意した。
思いついたのがまんじゆうの製造。 多くの観光地でご当地まんじゅうが土産物となっているが、日光名産のゆばを使い、観光客が喜ぶまんじゅうができないかと考えた。
ゆばは中国から伝わった食べ物。日光には精進料理の材料として持ち込まれたとみられる。
県内のいろいろなゆばで製品化を試みた。最終的に地元の専門業者、まつたかの製品を使った。まつたかは「安い中国産の大豆だと甘みが出ない」として、割高でも県産の大豆の原料にこだわっていたからだ。
このゆばを細かく細断し、豆乳と一緒にまんじゅうの皮に練り込んだ菓子を約1年かけて製品化。03年ごろから本格的に販売を始めた。
山本社長は「このゆばの濃厚な味わいが、まんじゅうの甘みにも合った」と振り返る。
その後、東京・浅草から訪れた常連客から「油で揚げてみれば」という提案を受けた。浅草では揚げまんじゅうを売る店があった。 半信半疑で調理してみると、外側がサクサク、内側のまんじゅうがやわらかく、面白い食感だった。
まんじゅうも観光客に人気があったが、揚げゆばまんじゅうは珍しさもありヒツト。1個180円だが、多い日で1日2000個を売ったこともあった。
食堂をやめた今、揚げゆばまんじゅうが会社を支え、売上高の7割を占める。直近の3年は連続して増収増益だ。
さかえやは県産品を使った「細こぼう醤油漬」なども取り扱う。食の安心・安全への関心が高まリ、地産地消の食材の需要が拡大し
「ようやく地元産へのこだわりが注目される時代になった」と感じている。
地元の名物をまんじゅうに活用し、日光の土産物のすそ野をひろげたさかえや。今後は日光市内の他の店とも協力し、
地元産の食材を中心とした土産物のホームページも立ち上げ、観光客の掘り起こしに一役買う考えだ。