読売新聞社 栃木「キーマン」掲載

東武日光駅前に店を構える菓子製造販売店「さかえや」は
http://www.yomiuri.co.jp/local/tochigi/feature/CO016612/20150723-OYTAT50000.html
以下、YOMIURI ONLINE より
◆揚げまんじゅう 客のヒントから
■サクサクの食感 ――「揚げゆばまんじゅう」が看板商品になっている。
生地の部分に、日光産のゆばと、国産大豆を使った豆乳を練り込んでいます。中のこしあんは、日光市内で作ってもらったオリジナルのあんを使っています。
そのままで食べるのが「日光ゆばまんじゅう」(税込み150円)で、衣を付けて揚げたのが「揚げゆばまんじゅう」(同200円)です。揚げゆばまんじゅうはサクサクとした食感が癖になります。
――なぜ、ゆばを使ったのか。
当初は、よくある温泉まんじゅうを作っていました。それもじわじわと売れてはいたのですが、やはり、お土産として売るのであればその土地の食材を使いたいと思い、ゆばを使ってみました。
■浅草に触発され ――ヒット商品が生まれるきっかけは何だったのか。
最初は日光ゆばまんじゅうだけだったんですが、常連さんから「東京の浅草では揚げまんじゅう屋がはやっているよ」と言われたんです。そこで、時間を作って浅草へ行ってみると、みんな包み紙を手に、揚げまんじゅうを歩きながらパクパクと食べていました。まんじゅうを揚げるなんて考えたことがありませんでしたから、衝撃的でした。僕も8軒くらい食べて回りました。
開発には1年くらいかかりました。うちの最寄り駅は東武日光駅なので、浅草や北千住からのお客さんが多く、東京以下のものを作っていては「なんだ、こんなものか」と言われてしまいます。何度も浅草に通い、油や天ぷら粉も色々な種類を試しました。東京のレベルに達し、超えると思うまでは販売しませんでした。
揚げゆばまんじゅうには塩がかかっていますが、それもお客さんの知恵からです。百貨店の催事に出た際、「私はこれに塩をかけて食べるのよ」って。最初は甘い物に塩?と思いましたが、塩はまんじゅうの味を引き立ててくれるんですよね。生の声はすごく大切だと思います。
■以前は食堂も ――元々はみやげ物の販売と食堂経営だった。
昔は1階が観光みやげ店、2階は食事処でした。亡くなった祖母が創業者で、その後父が2代目となり、私が3代目です。昔はとても忙しくて、中学生の頃から、長期の休みになると皿洗いなどを手伝っていました。ピーク時は売り上げが1億1000万円ほどあったんですよ。
――今の形にした理由は。
社会人を5年ほど経験した後、父の高齢化もあって2000年に店に戻りました。しかし、かつてのにぎわいは失われていました。そこで、まずは観光客の行動パターンを知ろうと思い、東京へ行きました。以前は日光に着いたらお昼ご飯という需要があったのですが、都内の駅にはおいしいお弁当がたくさんあり、コンビニも並んでいて、列車の中で昼を食べられる。わざわざ日光で食事をしない理由がわかりました。父親を説得し、思い切って食堂をやめました。
■人の心や状況読む ――まんじゅうで勝負したのはなぜか。
かつて、仕入れたまんじゅうをふかして売っていたことがありました。並べるのが間に合わないくらいに売れていた記憶があり、今度は自社製品でやろうと思いました。学生時代にアイスホッケーのゴールキーパーをやっていたためか、性格なのか、常に人の心や状況を読もうとしてしまいます。当時はパンがはやっていましたが、それならばライバルの少ないまんじゅうにしようと考えました。
――日光は日本でも有数の観光地。今後のあり方をどう考えるか。
なんと言っても世界遺産があり、大きな魅力です。戦場ヶ原や霧降高原など、自然豊かな場所も多数あります。2020年には東京五輪・パラリンピックも控えており、今後も観光客は増えると見込んでいます。国内外からたくさんの人に足を運んでもらう中で、うちのまんじゅうも買ってもらえたらいいと思っています。
■親しまれるお店に ――店としての今後の目標は。
たくさんあるので、付箋に書いて事務所に貼り出してあります。例えば、1回の滞在で2回以上買いに来てくれるお客さんを作ること、利益を日光に還元できる企業になること。何よりも、屋号に「さん」を付けて呼んでもらえるような、誰からも愛され親しまれるお店になっていけたらと思います。
◆1958年10月創業。まんじゅう2種類のほか、漬物などを扱う。昨年から販売を始めた天然氷を使ったかき氷も人気。従業員7人。本店・日光市松原町。
◆やまもと・さとし 日光市出身。中央大卒。学生時代はアイスホッケーに熱中し、大学卒業後、企業に就職。2000年にさかえやへ入社し、08年、3代目社長に就任。妻、長男、長女、次男の5人暮らし。
2015年07月23日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun